■ 質問
弊社はタブレットPCを製造しています。 それなりに価格対性能が良くて好評を受けているのにマーケティング専門人材がいなくて苦心していた中でA社を知りました。
A社は、自分たちがEUとアメリカで、我らの製品を販売していただけるということで、私どもとしてはうれしい気持ちで、一応A社とMOUを締結いたしました。 MOUの主な内容は、①弊社が独占的にタブレットPCをA社に供給する②A社は弊社からタブレットPCを独占的に供給され、全世界に販売する。 ③ 詳細については後日、本契約を通じて定めることとするでした。
ところが、A社はMOU締結後、何の実績も出せないではないでしょうか? 調べてみたらEUやアメリカ側に私たちの製品を販売する能力がない会社でした。 その時、偶然にB社を知ったのですが、B社は私どもの製品をEUやアメリカに販売できる能力を持っていました。 それでわが社はB社と正式の製品供給契約を締結しました。 ところが、この知らせを聞いたA社がB社と当社を相手に内容証明を送りました。 なぜ自分たちとMOUを締結しておいて、他の会社と製品供給契約をしたのかと問い詰めました。
MOUは法的拘束力のない文書ではないですか。 よって、わが社がA社とMOUを締結したとしても、A社がきちんと自分のすべき仕事をできなかったら、私たちは何の負担もなくB社と契約することができるのではないですか?
■ 回答
貴社とA社間のMOU内容が重要です。 もし、そのMOUに「法的拘束力排除条項」がなければ、MOUだからといって法的拘束力がないとは断定できません。
MOUは通常、「意向書」、「了解覚書」、「協定書」という名前で呼ばれ、正式契約を締結する前に互いの意思を確認する文書として作成されることが多いです。 ところが、このようにMOUを締結することは、もともと私たちの契約慣行にはありませんでした。 私たちは契約に関する協議を進め、ある程度合意に至れば直ちに本契約(MainAgreement)を締結します。
しかし、英米法系の国では契約を締結する全過程(process)で段階別に文書を作成するのが慣行になっています。
1. NDA
英米法系の国々と契約交渉を始めるなら、相手の会社は一旦NDAという書面を持ってきてサインをしろと言っています。 NDAは、Non-Disclosure-Agreement、秘密保持約定書を意味します。 つまり、「これからあなたたちと契約交渉を進めますが、お互いのやり取りは秘密にしましょう。 「分かった?」ということを約束される目的で締結するのです。
言い換えると、本契約を締結するために交渉段階で会って相手企業とNDAを締結したとすれば、これは交渉を始めたにすぎず、契約に関連した具体的な合意がなされたものとは考えにくいです。
それにもかかわらず、1999-2000年ごろ、韓国でベンチャーブームが起きたとき、「韓国のベンチャー企業である○○企業が、外国の大手○○企業とNDAを締結した」というような新聞記事が掲載され、それを受け、多くの投資家がそのベンチャー企業に押し寄せ、投資の機会を求めたという、笑えないハプニングがありました。
2. MOU
NDAを締結して協議を進めていた両当事者が、ある程度共感が形成され、契約を締結するだけの接点があると考えた時に作成するのがMOUです。 MOUは、Memorandum of Understanding、つまり、互いに理解したこと(Understanding)をメモしたこと(Memorandum)に過ぎません。
交渉の途中でこうしたメモを残しておくとどのような効用があるのでしょうか?
まず、お互いの考えを一度整理しておくことで同床異夢の陥ることを防ぎます。 人の考えは、具体的に作成することで明確になります。
第二に、ある程度合意された内容がそのように整理されれば、後で本契約を作成する時に容易になるという利点があります。 合間合間に復習をしておけば、後で試験を受ける時に楽になるのと同じ理屈です。
さてここで重要なことは、このようなMOUがお互いを拘束しあうのかに関する問題です。 MOUはまだ完全な合意に達していない中間時点で、各自の意図、意向について、お互いによく理解しているかを確認する性格が強く、MOU自体だけでも法的拘束力があるとは考えにくいです。
したがって、英米法上のMOUには必ず法的拘束力排除条項(Nonegal binding clause)が挿入されます。 つまり、MOU上の内容について、相手を法的に拘束しないことを明確にしたのです。 したがって、もし相手方がMOUの内容を守らなくても、法的に訴訟を起こしたり、損害賠償請求はしないという意味で、MOUはそのような点で神社協定の意味が強いです。
3.国内状況
ところが、1999~2000年頃、韓国でもMOUを締結する例が多くなり、多少の問題が発生しています。 つまり、タイトルはMOU、了解覚書、意向書、協定書といいながら、いざその内容には「~の権利、義務」、「~損害賠償」条項といった契約書に出てきそうな条項が挿入されるようになったのです。 当然、法的拘束力の排除条項は抜けています。
このように、タイトルはMOUですが、内容は契約書に類似して作成されたとしたらこの文書の性格をどのように見るべきでしょうか? これに対して韓国の裁判所は、「タイトルよりもその具体的な内容に重点を置いて判断しなければならない」と何度も明らかにしたことがあります。 当然そうするのが常識でしょう。
「え?MOUはただ互いに上手くやってみようという意志を込めたもので、それ自体拘束力がないのでは?」と抗弁する人が多かったのですが、裁判所ではこのような主張を受け入れませんでした。 「条項の内容に具体的な権利·義務という名称を用い、損害賠償責任まで定めており、さらに法的拘束力の排除条項もなければ、契約の性格を有するものであり双方を拘束するものと見なすべきである」というのが裁判所の立場でした。
4.結語
したがって、「MOU」という理由だけで法的拘束力がないと考えるのは間違っています。 MOUが法的拘束力がないためには、①「~の権利、義務」のような言葉を使ってはならず、②損害賠償条項もあってはならず、③何より「本MOUの内容は相手方を法的に拘束しない」という「法的拘束力排除条項」が必ず含まれなければなりません。
■ Advice
MOUだからといって、無条件に法的拘束力がないと勘違いしてはならない。
MOUの法的拘束力をなくすためには「法的拘束力排除条項」を必ず含めなければならない。
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[毎経ドットコム「MKビズ&ビズアンド」法律コラムリスト チョ·ウソン弁護士]
https://www.mk.co.kr/news/society/view/2014/11/1381770/
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