男性層もハマった『愛の不時着』アンケート調査

Netflixで配信中の『愛の不時着』。アクシデントによって北朝鮮に侵入してしまった韓国の財閥令嬢と、彼女を救った北朝鮮のエリート将校との許されぬ恋の行方を描いた韓国ドラマだ。日本では今年2月に配信開始されて以降、国内視聴ランキング上位にランクインし続けており、「韓流ブーム」を再燃させた立役者と言われている。


その人気はドラマの日本盤オリジナル・サウンドトラックにも波及している。5月リリースされたCD『愛の不時着 オリジナル・サウンドトラック』は、コンスタントに売上を重ね、過去5年で見ると、16年に放送され一大ムーブメントを巻き起こしたテレビ朝日系ドラマ『おっさんずラブ』のサウンドトラックに次ぐヒットとなっている。名場面を彩る挿入歌やBGMはもちろんのこと、ドラマの名場面の写真が収められたブックレットも人気のようだ。



■『愛の不時着』に対する好感は男性のポイントが女性を上回る


 ドラマ人気がけん引した韓流ブームとして思い出されるのは、『冬のソナタ』が契機となって日本全国に巻き起こった「第1次韓流ブーム」だ。03年にNHKがBSで同作を放送し、そのあまりの人気から翌年には地上波で放送され、全国的なヒットとなった。主演のペ・ヨンジュン、チェ・ジウ人気はもちろんのこと、ドラマの関連CDの売上もミリオンヒットとなった。そして当時、そのブームをけん引していたのは中高年女性だった。


 『冬のソナタ』も『愛の不時着』もラブロマンスである点では同じだ。しかし、今回は女性だけでなく、男性層もハマっているという。これが「第1次韓流ブーム」とは大きく異なる点である。そこで、その理由を探るべく、『愛の不時着』の視聴者にアンケート調査を行った。


 視聴者(143人)に、本ドラマに対する好感を聞いた。男女比率は、男性69人(48.3%)、女性74人(51.7%)とほぼ半々。「とても好き」「好き」は全体では92.3%と9割を超える高さで、男女で比較すると、男性の好感が女性を約10ポイント上回る97.1%となった。視聴時期は全体では、コロナ禍で緊急事態宣言発出中の「20年4~5月頃」(40.2%)の割合が最も高く、次いで緊急事態宣言解除後の「20年6月~現在」(34.8%)、配信が始まった初期「20年2~3月」(25.0%)となっているが、こちらも男女で比較すると、「20年2~3月」の割合は男性が女性を10ポイント上回っている。このことから、男性は配信開始時期から本作への関心が高かったという結果が出ている。


 では、視聴者は『愛の不時着』のどういう点に魅力を感じ、作品世界にハマったのだろうか。上記の回答で、「とても好き」「好き」と回答した132人に、当てはまる項目を全て選択してもらった「表『愛の不時着』にハマった理由(複数回答)。全体では、「主演の演技・役柄」(76.5%)が最も高く、次いで「朝鮮南北分断の背景」(46.2%)、「南北朝鮮の文化・生活様式の違い」(40.2%)の順にポイントが高かった。とくに目立つのは、「主演の演技・役柄」「禁断のラブストーリー」「登場人物のユーモラスな掛け合い」「隊員や村人との交流」「サブキャストの演技・役柄」などの項目で女性のポイントが男性を大きく上回っている点だ。メインのラブストーリーだけではなく、サブストーリーや彼らを取り巻く登場人物たちにも愛着を感じている様子がうかがえる。




■女性のハマったポイントは「禁断のラブストーリー」、男性は「南北朝鮮の文化・生活様式の違い」


 次に選択した項目の中から、最も当てはまる理由を1つ選んでもらった。男女の上位3項目を比較すると、ここで大きな差が表れた。男女ともに最もポイントが高かったのは、前出の複数回答と同様に「主演の演技・役柄」で、ともに4割を超えた。ところが、女性では2番目に「禁断のラブストーリー」(23.1%)、3番目に「登場人物のユーモラスな掛け合い」(9.2%)が入っているのに対して、男性は2番目に「南北朝鮮の文化・生活様式の違い」(11.9%)、3番目に「朝鮮南北分断の背景」「禁断のラブストーリー」(ともに10.4%)という順になっている。


 男女ともに「主演の演技・役柄」を高く評価している点は同じで、「演技力が高い」(20代男性/東京)、「主人公ソン・イェジンのメリハリのある演技がいい」(50代男性/岡山)、「迫真の演技が最高」(50代男性/大阪)、「軍人役のヒョンビンが素朴で一途に守りぬく姿がカッコよかった」(30代女性/岐阜)、「主演2人が美男美女で掛け合いが楽しかった」(50代女性/埼玉)といったコメントから、主演2人の魅力にどっぷりハマっている様が伝わってくる。


 そして、先行きが見えない2人の恋の行方に女性は、「ありえない設定だが、きゅんきゅんして号泣させられた」(20代女性/新潟)、「同じ言葉を話すのに一番近くて遠い国の究極の恋愛に泣けた」(30代女性/東京)と涙し、男性は、「緊張感が良かった」(50代男性/茨城)、「韓ドラお得意の展開と分かりつつも、ドキドキしながら見た」(50代男性/三重)と、ハラハラドキドキしながら物語に引き込まれていったようだ。


■フックの多いストーリー、シリアスとコミカルの絶妙なバランス


 ドラマでは、主人公の韓国の女性(ユン・セリ)が初めて体験する北朝鮮の暮らしに衝撃を受けるシーンが度々描かれている。停電は日常茶飯事で、村の女性たちは、かまどで火を焚き、共同の洗濯場で手洗いする。生活は素朴で貧しいが、市場でお金を出せば、韓国製の化粧品や日用品なども手に入るという農村部の生活や、スマホを持ちデパートで買い物したり、レストランで食事したりする首都・平壌(ピョンヤン)に住む人々の暮らしとの対比も描かれている。


 「南北分断という背景がリアル」(30代男性/愛知)、「北と南の違いが多少なりとも理解できた」(40代男性/神奈川)、「すぐ近くの距離なのに、現在(南)と過去(北)の生活様式があって興味深かった」(50代男性/大阪)、「現実はもっと厳しいと聞くが、それでも報道ベースでしか知らされない北朝鮮の実情、平壌と村の違い、地位争い、盗聴、南への意識などが描かれていた」(60代男性/東京)など、男性はそういった丁寧な描写にも強い関心を持ったようである。


 前出の『冬のソナタ』の大ヒット以降、多くの韓国ドラマが日本の地上波で放送され、『宮廷女官チャングムの誓い』をはじめとする歴史ドラマには多くの男性ファンがついたことを考えると、南北朝鮮が舞台という設定に男性層も強い関心を示した点は非常に納得できる。そういう意味でも、『愛の不時着』はフックの多いストーリーであったことがわかる。


 加えて、女性がハマった理由の3番目に「登場人物のユーモラスな掛け合い」を挙げているように、本作ではシリアスなシーンとユーモラスなシーンが、実に絶妙なタイミングで切り替えられて、テンポよく話が進んでいく。「中だるみのないラブサスペンスアクションジェットコースターストーリー」(60代男性/栃木)という言葉に代表されるように、飽きさせない演出の工夫も、女性層だけでなく男性層も引き込んだ要因の1つに挙げられるのではないだろうか。


 これまで、韓国ドラマでは「何だか得体の知れない国」として描かれることが多かった北朝鮮だが、本作では、そこに生きる人々もまた「自分の居場所で懸命に生きている」と視聴者が実感できるような、温かな目線で描かれていた。これも本作の視聴後の余韻を長引かせている一因であることを付け加えておきたい。


https://www.agara.co.jp/article/81534

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