日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
韓国の造船業界はこの数年、業績悪化に苦しんできた。韓国の造船業界は中国の低価格攻勢に敗れ、シェアを奪われてきたためだ。加えて、業績悪化に追い打ちをかけるように新型コロナウイルスが発生して、韓国の造船業界は大打撃を受け、深刻な受注不足に喘いでいた。新型コロナの感染拡大によって、世界経済は停滞し、石油価格も値下がりし、船舶の発注はほぼ中止または延期を余儀なくされた。
ところが、韓国造船業界はそのような状況下でも、中国と競合するコンテナ船やバルク船の建造に比べて、非常に高い技術力を必要とする付加価値の高いLNG(液化天然ガス)タンカーなどの技術開発や建造技術の向上に注力してきた。
LNGタンカーでもっとも大切な箇所は、マイナス163℃という超低温の液化天然ガスが気化しないように、中側と外側の熱伝導を遮断する貨物艙である。この貨物艙の技術は、フランス企業のGTTがほぼ独占しており、LNG貨物艙の技術ライセンス市場で95%のシェアを占めている。韓国の造船会社は、これまでGTTに1兆4,000億ウォンのライセンス料を支払ってきた。
そのような状況のなか、国際海事機関(IMO)は温室ガス対策や大気汚染を防ぐため、環境規制の適用を一般の船舶にも拡大することを明らかにした。加えて、EUも地球温暖化防止のため、さらに新しい船舶規制を検討していることがわかった。
IMOは、2020年1月から船舶の燃料に使われている硫黄酸化物の含有量を、現在の3.5%から0.5%に減らすという規制を発表した。IMOの環境規制の強化により、世界的にLNGの需要が伸びることが予想され、それによってLNGを輸送するLNGタンカーの発注の増加も見込まれるようになった。
クラークソンズ・リサーチによると、LNG船の発注は、2019年に55隻、20年に75隻、21年に78隻、22年に87隻、23年に85隻、24年に78隻、25年に64隻、26年に81隻、27年に98隻、28年に104隻と10年間に805隻が予想されるという。
また同社の集計によると、直近5年間で韓国の造船業界が受注したLNG船は14年に49隻、15年に11隻、16年に6隻、17年に7隻、18年に66隻と合計139隻の実績がある。韓国の造船会社の10月末の受注残高は1,914万CGTで、その内訳はLNG船が半分を占めている。
LNG船は同規模のバルク船に比べ、価格が3倍以上という付加価値の高い船舶である。新型コロナと原油価格の下落で冷え込んでいた船舶建造入札が久しぶりに再開され、LNG船の受注に対する期待が高まっている。フランスのTOTALが主導で進めているモザンビークLNGプロジェクトに関連して、16隻が発注される予定だ。現代重工業とサムスン重工業はそれぞれ8隻ずつLOI(基本合意書)を締結し、年内に正式に受注されると予想される。
サムスン重工業は、25億ドル規模の船舶ブロックおよび機材を供給する契約をヨーロッパの船主と締結したと発表した。サムスン重工業は創業以来最大規模となるこの受注によって、今年の受注目標の半分を達成した。受注残高は5カ月ぶりに再び200億ドルを上回った。大宇造船海洋もヨーロッパの船主からLNG船6隻を受注し、その受注金額は2兆274億ウォンである。(つづく)
https://www.data-max.co.jp/article/39166
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